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2024.11.03 Sun

医療法人の謎と真実

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医療法人の謎と真実のイメージ

医療法人について必ず知っておきたいこと

街中で医療機関の看板で「医療法人〇〇会」といった表記を目にする機会は多いのではないでしょうか。

しかし、医療法人とは具体的にどのような組織で、一般の病院やクリニックと何が違うのか、詳しく理解している方は少ないかもしれません。

今回は、そんな謎多き医療法人について、その実態を分かりやすく解説していきます。

医療法人の種類や設立条件、メリット・デメリットといった基本的な情報から、税制上の優遇措置や、医療法人ならではのトラブル、そして医療法人が担う社会的役割まで、多角的に掘り下げていきます。

医療関係者の方だけでなく、医療法人に関心をお持ちの方、これから病院やクリニックの開業を検討されている方など、ぜひ本記事を参考にしていただき、医療法人への理解を深めていただければ幸いです。


そもそも医療法人とは何か

医療法人は大きく「医療法人社団」と「医療法人財団」の2つに分類されます。

  • 医療法人社団:個人の集まりによって設立
  • 医療法人財団:財産の集まりによって設立

そして2007年の医療法改正以降、新規設立は出資者の権利が法人に移行される「持分なし医療法人」のみが認められています(「持分あり医療法人」の新規設立は不可)。

  • "持分なし"のみ設立可能という法改正は医療法人が乗っ取られるケースに関係する重要な法改正になります。

医療法人は、株式会社や有限会社といった営利を目的とする会社とは異なり、「公益性」を重視した法人形態です。

そのため、医療法人を設立するには、都道府県知事の許可が必要となり、厳しい審査基準をクリアしなければなりません。

しかし、その性質は株式会社と似ている部分も多くあります。

医療法人の設立条件(概要)
  • 医療機関を開設していること(診療所または病院)
  • 常勤の医師または歯科医師が1名以上いること
  • 最低資産額が定められた基準を満たしていること
  • 定款・寄附行為を作成すること
  • 理事3名以上、監事1名以上を選任すること
  • 社員(持分あり医療法人の場合)が3名以上いること
  • 都道府県知事の認可を得ること
  • 非営利性を確保すること
  • 医療法に定められた各種書類を提出すること
  • 税務署への法人設立届出を行うこと

医療法人と個人事業の病院・クリニックでは、社会的な信用度や資金調達のしやすさ、税制上の優遇措置など、様々な違いがあります。

現在は新規での認可はされませんが”持分あり”とは会社法でいうところの自社株を所有する株式会社の経営者や合同会社の代表社員に似ている区分になるでしょう。

持分とは法人の財産所有権を主張できるかどうかの基準

医療法人のメリットとデメリット

医療法人には、個人事業の病院・クリニックと比較して、以下のようなメリットとデメリットが存在します。

メリット:
  • 相続対策が容易 資金調達がしやすい
  • 社会的信用度が向上
  • 経営の永続性が確保できる
  • 従業員の福利厚生が充実
デメリット:
  • 設立手続きが複雑
  • 維持費用がかかる
  • 行政の監督が厳しい
  • 解散時の手続きが煩雑
医療法人化するメリットやデメリットは株式会社と類似する

税制度が特別優遇される医療法人

医療機関は、その公益性の高さから、税制面で優遇されています。個人事業の病院・クリニックでも、医療費控除や医療機器の特別償却など、様々な税制優遇措置が受けられます。

クリニックや医院などの一般診療所は社会保険診療の経費計上の優遇が高いですが、所得が増えれば高税率になる超過累進課税率であるため個人事業者と同じような税率となってしまいます。

ですので診療報酬が大きくなればなるほど、医療法人化することで税率を軽減することが可能です。

医療法人は以下のような税制上の優遇措置があります。

  • 医療法人税は低税率(15%と約23%) (改訂により変動)
  • 社会保険診療報酬の所得計算の特例
  • 医療機器等の特別償却制度
  • 事業承継税制の適用

一般法人にも適用されている税制上の優遇措置は、医療法人の経営を安定させ、医療サービスの質向上や設備投資に繋がるという観点から設けられています。

医療法人とは診療所を会社化すること

理事長でも医療法人が乗っ取られるワケ

医療法人は、理事会が最高意思決定機関となり、理事長はその代表として組織運営を担います。

一般的には、病院やクリニックの院長が理事長に就任することが多いですが、場合によっては、理事長が医療法人を「乗っ取られる」ケースも存在します。

  • ケース1:理事会での多数決による解任
  • ケース2:社員総会での不信任
  • ケース3:親族や他の理事による経営権の争い
  • ケース4:定款の不備による権限の制限

医療法人の乗っ取りは、外部のコンサルタントや投資家などが、理事会に送り込んだ人物を通じて、不当に経営権を掌握してしまうというケースが考えられます。

こういった法人の乗っ取りは一般の株式会社と同じ経緯で実現されてしまうため注意が必要です。

また、親族間で経営権を争ったり、理事長の交代を巡って内部対立が勃発するケースも少なくありません。

医療法人の乗っ取りを防ぐためには、定款で理事の選任方法や解任要件を明確化したり、外部の専門家による監査体制を導入するなどの対策が必要です。

理事長が創業者でも解任することは可能

医療法人の真の役割

医療法人化は、医師にとって、事業を安定させ、発展させていくための重要な経営戦略と言えるでしょう。

税制上の優遇措置を最大限に活用することで、資金繰りの不安を解消し、医療機器の導入や人材育成に積極的に投資できるようになります。

しかし、医療法人には事業戦略としての税制上の優遇を目的とし単なる利益追求の手段を超えた、重要な社会的役割を担っています。

  • 地域住民に対して、質の高い医療を安定的に提供し続けることです。

医療法人化を通じて、経営基盤を強化し、医療体制を充実させることは、ひいては地域医療への貢献、ひいては日本の医療制度を支えることに繋がっていくと言えるでしょう。

医療が企業経営となる時代へ

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