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2022.10.10 Mon

高齢化社会の医療費高騰でクリニックが直面すること

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高齢化社会の医療費高騰でクリニックが直面することのイメージ

高騰し続ける国民一人当たりの医療費

あなたは国民ひとりあたりの1年間の医療費がどのぐらいかかっているかご存じですか。

厚生労働省から公表されている「令和元(2019)年度 国民医療費の概況」(令和3年11月9日公表)によれば、「国民医療費」は44兆3,895億円となり2018年度は43兆3,949億円なので前年度比2.3%増というような現状です。

  • 人口一人当たりに換算すれば、国民医療費は35万円弱となるようです。

令和元(2019)年度 国民医療費の概況

医療費の動向調査では2021年度(令和3年)の概算医療費の合計は44.2兆円と算出されていますので、ここ数年は国民一人当たり概ね年間30数万円以上の医療費がかかっていることになるようです。

令和3年度 医療費の動向

毎年の医療費が10万円を超えている方であれば平均かそれ以上、10万円以下の方であれば、平均よりも医療費がかかっていないことになります。

高騰する医療費の原因としては色々や要因が挙げられておりますが、どれも正しい見解であると見られます。

今回のドクトルメディアでは、高騰する医療費と高齢化人口比率がクリニックにどのような影響を与えていくかについて予想を交えた考察を紹介させていただきます。

一つ言えることは、高齢化社会下では医院やクリニックの生存競争は激化し、リスクの高い業種となることが見込まれていることでしょう。


人口統制による継続的減子施策

日本史から見れば、数値的な正確性はやや確証が持ちづらい点がありますが、これまで人口推移からも極端に発展してきており、21世紀を境に極端に縮小していくことが予測されています。

我が国における総人口の長期的推移

総務省の資料を見てぞっとしましたが、これは大袈裟な予測ではないでしょう。
2100年ごろの日本人の人口は高位推移と中位推移の中間ぐらいになるのではないでしょうか。外国人労働者を国内に積極的に取り入れていても、従来海外に輸出していた安い労働力を国内に移設しても、安価な労働自体の消失率や国内の課税率を考えると、実質的に手立てがないというのが現実でしょうか。

統計グラフで凄く気になったのですが、明治維新後と終戦の2つのタイミングで3000万人強と5000万人の人口増加がありました。たったの50年間単位です。

  • たった100年間で人口が4倍になっています

いずれも明治維新と度重なる戦争のための国策による人口増加ですが、2004年を境に人口減が顕著になっています。

制度設計としてこれ以上人口を増やさないようにしているわけですが、これはやむ負えない状況なのかもしれません。とはいえ、国策として人口を恣意的に増やしたわけですから、国が全責任を持って、ソフトランディングでの人口統制が望ましいようにおもわれますが、そうも言っていられない状況なのかもしれません。

さて、このような人口推移と高齢者人口の割合がクリニックや医療機関に与える影響についてですが、一見、人口は減っても高齢者人口の割合が大きい分、医療従事者はしばらくは盛況になると予見されるかもしれませんが、当社ではまったく逆の予測を見込んでいます。

すでに条件付きではありますが高齢者の医療費負担率は、後期高齢者の医療費の窓口負担割合の見直しで令和4年10月1日より20%になっています。これが一般の75歳以上の年金生活者などに適応されていくのは時間の問題でしょうし、高額療養費制度の見直しもわりと世間に流布されるような状況になっています。

  • 生産年齢人口はむこう30年ほどで15%減少が予測されています。

それでも老齢者がいる限り医療機関は安泰あると言えない、いくつかの不安要素がありますが、次章以降ではそれらの点を踏まえて解説させていただきます。

日本史上初の大規模減子化施策

社保制度の抜本的変革

日本における社会保険制度とは、日本国民が生活の安心や安定を維持するための相互扶助のセーフティネットです。国民皆保険制度となっており、日本人であれば何らかの健康保険に加入している必要があります。

被保険者・被扶養者が病気やケガをしたり、高齢化に伴い介護や障害を持たれている場合の医療控除、そのほか失業や労働災害時にも公的な負担と保険料、受診者負担の分散負担によりリスク保証をする制度です。

ただし、原資は生産年齢人口と年金生活者の実質的な健康保険料や消費税となっています。実質的な信ぴょう性はともかくとして、建前上そのようになっているとすれば、増加し続ける国民一人あたりの医療費が現状のまま推移していくことになれば、数値的な論理破綻が生じることになるでしょう。

数値的な論理破綻が浸透してしまえば、社会保険制度は瓦解しかねませんから、どうしても社会保険制度が抜本から変革されることは避けられないでしょう。

社会保険料自体も1970年台は3割負担になっていましたが1984年には本人負担が1割となったあと2003年には3割負担になるなど、数字的な変革は制度発足以来、ずいぶん変動しています。

ただし、これらの数値的なチューニングはあくまでも成長過程での変革となり、日本史上はじめて到来する急激な国体縮小下では、どんな変革が起こるか予想が難しいかもしれませんし、制度自体がまったく別の制度に変化してしまう可能性すらあるでしょう。

医療スタグフレーションへの懸念

総務省の予測数値だけでみても、医療行為のニーズは増大しつつも医療費の捻出が総体的に困難になっていく、

  • 医療のスタグフレーション

は避けては通れない状況がすぐそこまでやってきているような状況です。
国家負担で医療費に関しては緩慢な施策が実施されればよいでしょうが、国家財政にバランスシートが採用されているとすれば、ほぼほぼその可能性は低いと予測されるのではないでしょうか。

社会保険制度はできてたった数十年程度の制度

患者負担比率が変わらなくても患者さまがいなくなる

1973年には老人福祉法の改訂により、老人医療費支給制度において70歳以上の高齢者は10年間医療費が無料でした。

無料化したために1975年の統計では1970年の統計と比べて受診率が1.8倍になったと記録されています。

我が国の保健医療をめぐるこれまでの軌跡

このことからも受診料の自己負担率は患者数にかなり影響していることが見受けられます。このまま社会保険料の自己負担率は総体的に上昇するのはほぼ間違いない状況ですが、もしかりに医療費の患者負担率が据え置きであった場合は、ある程度楽観視できるような状況であるのでしょうか。

消費税という外的要因

すでに10%の消費税は、社会保障制度の維持のため、今後も上がり続けると言われております。
日常生活での税負担が増加するわけですから、目に見える形で可処分所得が減り、自由裁量所得はさらに減るわけですから、販管コストとして医療関係にかけられる所得の割合いも間違いなくシュリンクさせる意識が強くなります。

また、当社統計では所得的に余裕がある場合よりも、ある程度制限されている状態であるほうが、健康診断においても良好な数値や評価となるケースが実証されています。

不規則で悪性ストレスの高い生活習慣は改善され、過度な栄養素の摂取も抑えられることで、人体は本来の健康体により近づきやすくなる傾向があります。

  • 可処分所得が減ることによって多くの人は健康になりやすい可能性がある

さらに医療費負担率が増えている状態ならば、より家庭の医学が発展しやすい可能性は高く、有効な情報はインターネットを通じて広く認知されていくことになるので、総体的な受診率は長期に渡って低減することが見込めるのではないでしょうか。

  • ほぼ間違いなく次世代高齢者の医療離れが深刻化する

というリスクヘッジは大袈裟でないのではないでしょうか。

仮のそのような状態にならなければさらに良い状態を維持できるわけですから、予防策を講じておいてデメリットとなることは一切ないでしょう。

また、仮に医師会などの連携があったとしても、家庭医療がより身近になっていってしまう場合に、予防接種や検診自体の受診率が向上することはほぼ期待できなくなる時期にさしかかっているといえるでしょう。

消費税というレバレッジの大きな影響

危険度MAX高リスク不摂生患者が医院を襲う

前章までは、実は数値的な視点から医療業界を予測していましたが、もっと切実な問題である、

  • 来院する患者層の傾向

医療費負担増や消費税の影響で、これまで、ちょっとしたことで受診していた患者さまはクリニックから減少してしまうとすれば、その代わりに増える患者層がありそうです。

それは、

  • 自ら病気になってしまう人々

となるかもしれません。

過飲食やアルコール依存など、生活習慣による自傷行為に近しく明らかに病気になることがわかっているのに止められない人というのは一定数の割合でいますので、それらの人たちがより精神的に追い詰められた状態で来院する可能性が高まります。

さらに高齢化することで子供返りしてしまう老齢者は増え続けるので、

  • いうことを聞いてくれない患者ばかり
  • 社会通念が通用しない患者ばかり

が立て続けに来院してくることになれば、医師やスタッフのメンタルはどれほど持ちこたえられるでしょうか。

説明するまでもありませんが、近年は医療従事者や医療機関が個人的なテロ行為の犠牲になっている事が少なくありません。

もともと自制することも節制することも苦手な人は病気やケガをしやすい傾向にありますので、医療機関は益々リスクの高い業態となることが予想されます。

自己防衛策が必須の医療機関

オンライン診療の早期導入と整備

前章では医療機関のリスクと今後の展望などについて考察させていただきましたが、すでに危険を感じている医療従事者の方も少なくないのではないでしょうか。

人はケガや病気によって、運動神経は低下したり、自律神経は乱れやすくなり、健常時の状態とは精神的にもかなり変容してしまいやすいです。

  • さらに増税や失業などにより生活苦などが重なってしまっている場合、いつ有事につながらないとも限りません。

ここでは、医療機関のリスクヘッジとしての一つの方法として、

  • オンライン診療の早期本格導入

が推奨される理由について解説させていただきます。

いまや高齢者でもLINEビデオ通話などでコミュニケーションを図っている方も多いため、いくつかのチャットツールなどを利用したオンライン診療の本格的な導入をすることで、将来的な大きなリスク回避につながるのではないでしょうか。

さらに昨今の感染症対策としても、未知のウィルス対策の予防策としてオンライン診療の導入は避けられない時勢であるともいえるでしょう。

また、オンライン診療の対応の過程で、治療や手術を含めた広義での適応要件を満たしているかを事前にチェックすることもしやすくなり、診療リスクの高い患者かどうかを見分けることも可能になるので、複合的なクリニック防衛の視点からも、オンライン診療の本格導入はこれからの医療機関では必須となるかもしれません。

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柔軟な経営判断のとホスピタリティ向上から

これからシュリンクしていくことがかなり濃厚な日本の社会構造ですが、医療機関であってもダイナミックな経営判断が必須となってくるでしょう。

従来の仕組みだけでなく、これまで来院してきていた患者層の意識も大きく変容する可能性が高いため、”あと30年は大丈夫”かもしれませんが、前倒しで勢いよく社会変革が訪れる可能性はまったくないとも言い切れません。

特に明治時代から終戦時期、終戦後から2000年ぐらいまでのかなり突出した変容は、たったの半世紀毎に連続して起こっています。

これまでは手放しで維持できていたものが早期判断と決断を積み重ねていかないと、事業計画書をもとに受けた融資の返済シュミレーションの計画がまったく予測もつかない数値の乱降下をしてしまう可能性もあります。

融資を受けた金融機関でも対策がおぼつかず対応が間に合わない可能性も多分に予想できます。

  • デジタル化時代だからこそ大切なホスピタリティ

これからの経営指針として重要なのは拡大膨張路線下での経営ではなくて、縮小していくこと前提とした、

  • 良質のホスピタリティをもとに良質の患者層が集まるクリニック

につきるでしょう。

たとえばあなたがいくら名医であって明らかに治療の必要性がない症状の患者が診察に来た場合であっても、

  • このくらいで来たの?

なんて、くれぐれも言わないことです。

その患者の世帯は、ほぼ一生貴院へは来院しなくなりますし、ほかの世帯への波及効果もあるかもしれません。

ぶっきらぼうに本当のことを伝える場合でも、充分に患者との信頼関係やコミュニケーションがとれている状態で伝えるような配慮が必要になります。

さらに来院しなくなるぐらいなら良いかもしれませんが、逆上して逆恨みされてしまいあらぬトラブルへ巻き込まれるリスクも年々高くなっているといえるでしょう。

クリニックにより求められる経営者視点
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今のうちに販管費からの徹底見直しがおすすめ

今後30年の間に急速にいろいろな状況が変化します。

総務省の統計は、平時での予測値なので、世界規模の紛争や感染症など不測の事態が生じれば、その数値的な予測値は大きく上振れすることになります。

  • 平時でも人口でいえば25%減り、生産年齢人口の割合は15%減、代わりに高齢人口比率は20%前後上昇が見込まれます。

さらに健康保険料の上昇や消費税の上昇は今よりも1~2割程度は確実に上がることが見込まれますから、現状維持という経営方法ではかなり困難な時代を迎えることになるのではないでしょうか。

ですので、現時点からオンライン診療などのネットワークやデジタル機器を積極採用した受診体勢を整備し、リスク回避や販管費の見直しなど、経営者視点でも厳しい経営判断を積極的に行っていく必要があるのではないでしょうか。

単純にコストカットするということではなく相対的な視点やバランス感覚が必要になりますが、

  • 1,000円の経費でも不要と判断したら見直す

家計なども同じ傾向があるのですが、毎月の出費をよくよく見直してみると不要な経費がいくつか見つかったりします。

金額は少額であったりしますが、積み重ねたりかかる手間などを考慮すると、実際の出費以上に経費負担となっている場合があります。

販管費の見直しをする場合には、あなたのクリニックに訪れる営業担当者の数などを基準にして考えても良いかもしれません。

たとえば医薬品卸売業者が一人くるとして、おそらく何も購入していなくても2~3万円の販管費は支払っていることになります。大きな金額ではないかもしれませんが、クリニック自体で考えると少なくとも3社から4社ぐらいは医院経営と関係する事業会社はあるでしょうから、それだけで6~12万円ほどの販管維持費が毎月知らぬ間にかかっていると見て間違いありません。

その他に、実費ベースで毎月支払う販管費があるわけですから、

  • 本当にその費用を支払い、事業者と関わる費用対効果があるのか

という点については仮に数千万から億を超える融資を受けている医院経営者の場合に些細な金額と軽視しがちな場合がありますが、金額を過小評価せずに仮に1万円程度の金額であっても真剣に吟味しておく必要があると言えるでしょう。
これは金額の大小が重要ではなく、事業経営者としての大切なマインドセット慣習を徹底しておくことが、リスクヘッジとして中長期的に強力な派生効果をもたらすためです。

それらの徹底した販管費のリサーチや管理が10年後の難局を乗り切れるかどうかの分水嶺になることは想像に難しくないのではないでしょうか。

現状がなかば恒久的またはソフトランディングで下降していく未来であれば、それはそれで良好な状態は維持できますし、かりに社会情勢の変動が大きく上振れした場合にも耐性を持っていれば乗り越えられる可能性は高くなるわけですので、どちらにしても堅牢な医院経営体制のシステムを構築しておくことによるアドバンテージは医院経営の引き継ぎが前提であっても、かなり大きいと言えるでしょう。

徹底した販管費の見直しはしあわせな医院の未来に直結する
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